その他の検査
夫婦染色体検査
夫婦染色体検査
ご夫婦の採血検査によって行う染色体検査のことです。末梢血液中の白血球から染色体を取り出し、Gバンド法という特殊染色を行って染色体の数や構造の異常がないかをみる検査です。
※夫婦染色体検査に関しては、当院通院中で、治療の経過により医師が必要と判断した患者さんに行っております。お問い合わせいただいたすべての患者さんに行っている検査ではありません。
あらかじめご了承ください。
染色体とは
人の体は、おおよそ60兆個の細胞で構成されています。すべての細胞には遺伝情報が入っている核があり、核の中には23対=合計46本の染色体がおさまっています。そしてそれぞれの染色体に様々な遺伝子が詰め込まれています。染色体は1番から23番までの番号がついており、23番目は性を決定する染色体です。
通常、それぞれの対を構成する染色体は、片方を母親から、もう片方を父親から受け継ぎます。
つまり、卵子には母親から受けついだ23本の染色体が、精子には父親から受け継いだ23本の染色体が存在し、受精することによって23対、計46本の染色体となります。
染色体の変化による妊娠への影響
3回以上流産を繰り返すことを習慣流産と診断しますが、このうち、約4~5%でご夫婦のどちらかの染色体に変化がみつかることがあります。なかでも、遺伝子の過不足がある均衡型転座(相互転座およびロバートソン型転座)が最も多く認められ、初期流産を繰り返す方に多い傾向があります。
転座の染色体異常がある場合は、ご本人には問題となることはありませんが、精子や卵子には染色体の変化が起こる可能性があります。
卵子、精子が創られる減数分裂の過程で一定の割合で正常な染色体と、変化した染色体ができ、そのうち変化した染色体の卵子、精子が受精・着床すると流産となることがあります。
しかし、正常な染色体の卵子、精子も発生するため、こちらが受精・着床した場合に、出産は可能です。
染色体検査を受けられる前に
染色体検査の前に十分な診察のお時間をいただき、ご夫婦での問診やカウンセリングなどが必要となります。
検査をご希望される方は、医師が十分に説明をし、ご夫婦のご理解とご同意のもと検査を行います。なお、いただいた同意書はいつでも撤回でき、また撤回することによりその後ご夫婦の当院での治療に不利になるようなことは一切ございません。
また、染色体の変化の種類によって児の出生頻度が異なり、また均衡型転座の多くはご両親から受け継いでいます。すなわちご兄弟姉妹にも影響が及ぶため、検査を実施される前に結果のもたらす意味についてよく考えてから検査を受ける必要があります。
結果告知の方法は、ご夫婦にさせていただきます。それぞれの結果を開示して聞く方法と、おふたりどちらの染色体に変化があるかを開示せず結果を聞く方法の2通りの選択肢があり、検査を受ける前の診察の段階で希望をお伝えいただきます。
ただし、染色体の変化が見つかった場合でも、そのこと自体に対する治療法はありません。
相互転座をもつカップルの約31.9%は診断後の初回妊娠で出産に至っており、転座保因者の流産率は有意に高くなりますが、累積的には約68.1%が自然妊娠により出産可能だという報告もあります(日本産婦人科医会誌 2017年発行 No.99 より引用)。
なお、日本では日本産科婦人科学会に申請したうえで、着床前診断を選択することも可能です。当院では着床前診断のための検査を行うことはできませんので、可能な施設を紹介させていただきます。