高度生殖医療
体外受精・顕微授精・胚培養
培養室の中の受精卵
体外受精の際、採卵された卵子はどのようにしてお母さんのお腹に帰っていくのでしょうか?まず、採卵された卵子は培養液という胚を培養するためのお母さんのお腹の中(卵管)を再現するための液に移されます。この培養液の中で卵子と精子を受精させます。
受精の方法には2種類あって、精子の数が多くて運動性も良い場合は培養液の中で卵子と精子を混ぜあわせて自然に近い形で受精させます。これを体外受精(cIVF)といいます。精子の数が少ない場合や精子の運動性が低い場合、またcIVFで正常に受精しなかった場合には卵子に精子を注入する顕微授精(ICSI)という方法で受精させます。ICSIは1つの卵子に対して1つの精子を注入しますので、精子が1つでもあれば大丈夫ということになります。
受精した卵子は受精卵もしくは胚と呼ばれています。胚を培養する時にも培養液を使います。培養液はインキュベーターという専用機器によって培養されます。受精が確認出来た胚はお母さんのお腹に移植(ET)されるまでインキュベーターで培養されます。
胚の成長
胚はインキュベーターの中で、細胞分裂を繰り返して成長していきます。これを分割といいます。卵子が正常に受精すると1つの細胞の中に前核が2つ見える2全核期と言われる状態になります。しばらくすると2つの前核が消え最初の分割が起こり2細胞期の胚になります。次にこの2つの割球が同時期に分割して4細胞期になり、この4つの割球が分割して8細胞期になります。8細胞期から16細胞期になる段階で割球と割球がくっついて1つの塊に見える桑実胚(そうじつはい・モルラ)になります。さらに時間が経つとモルラの中に胞胚腔という液胞が出来ます。この段階が胚盤胞(はいばんほう)で、内側の膨らみが胎児になる内部細胞塊(ICM)で外側の膜が胎盤になる栄養外胚葉(TE)です。
タイムラプスインキュベーターによる胚培養
当院では、三重県ではまだ導入されている施設が少ないタイムラプスインキュベーターを用いて胚培養を行っております。タイムラプスシステムは、内蔵カメラと顕微鏡を備えたインキュベーターの中で、胚の画像を10分毎などの一定間隔で写真撮影を行い、その写真を連続で写すことにより動画のように見る技術です。
従来の胚の評価では、胚培養士がインキュベーターの中の胚を取り出し、数回にわたって観察/検査を実施します。
従来の方法に対し、タイムラプスはインキュベーターから胚を取り出さない、安定した培養環境での状態で観察を行っていくことができます。
全胚凍結
当院では、全胚凍結を実施しています。
当院の方針は凍結融解胚移植の方が、新鮮胚移植に比べて、移植当たりの妊娠率が常に10%以上高いという統計に基づいています。胚移植前の準備でホルモン投与を行うことにより、子宮内膜のホルモン環境が良くなるためだと言われています。